撮影意欲を刺激する超高感度特性。

α7sⅡはダイナミックレンジと超高感度に特化したSONY社のフルサイズカメラである。ダイナミックレンジの広さの実力は前回ご紹介した通り素晴らしいものだ。今回はα7sⅡのもう一つの力である超高感度特性についてである。
この超高感度が使用できるカメラに大いなる撮影意欲をもたらしてくれるのは私だけではないだろう。例えば今まで諦めていた超高速シャッターでの撮影やフイルム時代では考えもつかなかったような低照度の撮影が可能になったからだ。 陸上での夜景撮影ならば感度を無理に上げなくても三脚を使いスローシャッターでその美しい情景を捉えることも出来る。が、私の撮影フィールドは海中、数センチの僅かな波でも体は揺れ、いっときも静止することが無い生物達が被写体だ。超高感度がもたらすものは私にとって計り知れないものがある。

体の一部となる操作性

 その撮影を行うにはカメラを水から守ってくれるケースが必要である。すなわちハウジングであるが、僕が求めているのは水中でカメラを使えるだけの防水ケースではない。軽くて扱い易いハウジングであることは勿論だが、何より大切なのが堅牢性と確実なことだ。自然相手の撮影ではシャッターチャンスは特に大切だ、一度きりのシャッターチャンス、その時に不安材料があるだけで撮影の足かせになってしまう。だからこそ私がハウジングに求めるものは「体の一部となる操作性」であり、どのような環境でも変ることの無い「虚飾の無い、無骨さ」だ。状況は刻々と変化するネイチャーフォト。時間を無駄に出来ない状況下でレンズの変更や、それに伴うフロントポートの付け替え、設定の変更などを粛々と作業を終らせることが出来るACQUAPAZZAハウジング。そして本体と裏蓋の開閉は2本のOリングによる側面シーリング。この方法は外圧に対して絶対的な安心感を持たせてくれるACQUAPAZZAハウジングだけの特徴だ。走行中の船からハウジングを持ったまま飛び込んでも全く不安を感じない。

超高感度によって導き出されたシャッタースピードは揺れるアマモを止め、海底に映った万華鏡のように刻々と変化する光の模様を写し取った。僅かに出たノイズは月に照らされた海中の臨場感に彩を添え、ピクチャープロファイルPP6のトーンは神秘的な奥深さと艶やかさを表現した。誰も知らない夜の海をあくまでナチュラルに見せることが出来る表現力を持つカメラ、そしてその操作をまるで直に触れているように感じるハウジングの操作系。このコラボレーションがあったからこそ長年、私の心に描いてきた絵を実現することができたと思っている。

  • 1
  • 2

クリックで拡大

■撮影データ■

能登島

・使用ハウジング:ACQUAPAZZA APSO-A7S(α7s用 APSO-A7ハウジング) + INONドームポートⅡ 使用

・使用カメラ、レンズ:Sony α7s FE28mmf2+フィッシュアイコンバター

ピクチャープロファイル:PP6 1/8 f3.5 ISO 12,800 自然光

■阿部 秀樹さんがカスタマイズしたAPSO-A7

・グリップ改良(新規製作)

・グリップ上下プレート(新規製作)

・シャッターレバーをグリップに近づける為に製品のシャッターレバーを元に樹脂で改造しました。

・シャタースピードダイヤル(背面)、絞りダイヤル(正面右横)を大径に改良

・夜間撮影のために蓄光シールを各操作系に貼り付け

阿部 秀樹さん(写真家)

阿部秀樹写真事務所代表。最近は日本国内の海に眼を向け知床半島から沖縄まで幅広く活動し、ライフテーマとして水中生物の繁殖行動、夜の海、水中の四季、の撮影がある。又頭足類(イカ・タコ)では国内外の研究者との連携で撮影をおこなっている。

http://www.hideki-abe.com/index2.html