生物の行動を記録するには信頼が
置けるカメラとハウジングが必須。
生態観察は対象となる生物をどれだけ観察出来るかということが重要です。極端なことを言えばその生物を24時間ウォッチングし、いつどのタイミングで何をしているか観察したい訳です。いわゆる陸上動物や鳥であれば、場所を押さえてしまえば24時間張り付くことが出来ます。もちろん、その場所を特定するまでが大変ではありますが...。
しかし、我々人間も陸上動物の一種。相手が魚や水中生物となるとこれは簡単には行きません。場所を特定したからと言っても、簡単に24時間張り付くことは出来ません。これが海岸に近いような浅い場所ならまだしも、水深100mを超えるような場所ではせいぜい数分しか観察出来ません。陸上動物の観察可能時間から比較すると1分から数分の観察では生態観察とは到底言えないとレベルと言えます。24時間中の10分など、あまりにも断片過ぎます。そこで必要なのが生物の行動を記録するカメラ。なるべく生物に影響を与えない外部カメラで観察出来ればベストです。
防水機能、耐圧機能、大型バッテリーを収容するスペース。
AQUAPAZZAに白羽の矢が立つ。
ある程度行動範囲が決まっている生物であれば定点カメラを用いることが効果的。古くから用いられている鳥の巣や、動物の巣にカメラを設置するのと同じ原理です。でも、やはり水中環境にカメラを持ち込むには、更に高い障壁が存在します。そのためには防水機能、耐圧機能、そして長時間の行動記録を行うために使用する大型バッテリーを収容するスペースが重要です。勿論衝撃が加わった場合や大波にさらわれた時の耐衝撃性能です。最近は電子技術の発展により小型のビデオレコーダーが安価に手に入るようになりましたが、数時間の記録を行えるような物は存在していません。普段利用している、小型ですが高性能なソニーの4KビデオカメラFDR-X3000を用いて長時間の映像記録が撮れないか、更に深い場所でも使えるようなハウジングはないだろうか...
そこで白羽の矢を立てさせて頂いたのがAQUAPAZZA。
このハウジングはまだまだ開発中のプロトタイプではありますが(2017年3月に完成)、自分が調査で持ちうる範囲の成果としては十分な機能を果たしてくれています。構造上も非常に頑強で耐圧水深200mを実現し、荒れた海岸でもみくちゃにされたり、磯で岩の上に落としたりぐらいでは壊れることもありません。(中身が壊れればアウトですが...)また高性能バッテリーを搭載すれば10時間もの撮影が可能。あとは我々が10時間おきにカメラを取り替えるだけですから数分の作業で事足りる訳です。勿論生物は移動するので、その場所だけという訳には行きませんが、数カ所に設置するだけでもかなり有効なデータを得ることは出来ます。
AQUAPAZZAのソニーFDR-X3000用ハウジング、APSO-X3000は世界中の水中生態観察を行う研究者にとって欠かせないツールとなることでしょう。
■APSO-X3000による定点観察中
■イレズミフエダイ産卵群
■ルーフィー・・どこにいるか判るかな?
坂上治郎さん(水産学博士)
現在はパラオ共和国においてサザンマリンラボラトリーを主宰
主要な研究テーマは、ハゼとテッポウエビの共生における社会構造、フエダイ科魚類における繁殖戦略、パラオ沿岸部における稚魚の出現動態など。
最近のトピックは生きている化石「パラオムカシウナギ」の発見・学術論文発表など。
初めてパラオを訪れたのは1990年。2000年にパラオに渡りガイドダイバーを経て、現在に至る。
https://uoharudive.jimdo.com/